辞典で暇つぶし

辞典と図鑑が大好きです。

〔広辞苑で遊ぶ〕vol.01 追記あり

国民的辞書と称される『広辞苑』。紙の辞典として現在手元にあるのは
広辞苑 第四版』(岩波書店/1991)
収録されている語は約220,000項目。

辞典で遊ぶなどというと高尚な感じだが、ただひたすら引いてみる、この一言に尽きる。今回は変な名前を付けられた生物の名前を引いてみた。思い付くまま、ランダムだ。


〔ブンブクチャガマ〕(ウニの仲間)
載っている。この名称の影響からなのか、近似種には○○ブンブクという標準和名のものが何種類も存在する。

〔ヨーロッパタヌキブンブク〕(ウニの仲間)
さすがに載っていない。当たり前か。

タコノマクラ〕(ウニの仲間)
載っている。ちなみにウニ類ではムラサキウニは載っているがバフンウニは載っていない。バフンウニを載せずにブンブクチャガマやタコノマクラを載せる意義は不明(笑)。

リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ〕(植物)
載っている。これはアマモの異名だが引き直しても〔アマモ〕という項目には解説文の中にリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシという語は出て来ない。不思議。

*再度引き直したところ、アマモの項目の解説文中にリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシという語は存在している。事実誤認でした。申し訳ありません。(2022.03.23記)

リュウグウノツカイ〕(魚類)
載っていない。同じく竜宮を冠している前者は名称にインパクトがあるから採用されたんだろうか。前者よりメジャーな生物だと思われるが採用基準が謎である。

スベスベマンジュウガニ〕(甲殻類)
載っていない。最近では子供向けの図鑑にも載っているので残念。

〔トゲナシトゲトゲ〕(昆虫)
載っていない。これは正式な和名ではないので採用されないのも無理はない。

ヘクソカズラ〕(植物)
載っている。かなりメジャーなので当然といえば当然か。ヤイトバナ、サオトメバナなど穏当な別名(異名)もあるのに標準和名にこの名称を採用した学者も罪作りだ。

ママコノシリヌグイ〕(植物)
載っている。採用されたのはやはりインパクト抜群の名称だから?

ハキダメギク〕(植物)
載っていない。名称のインパクトだけで採用するのなら是非とも載せてほしい種だが。

〔オジサン〕(魚類)
載っていない。人間のおじさんは載っているが魚類としては無い。残念。

〔ヨゴレ〕(魚類)
載っていない。同じサメ類であるカスザメやホオジロザメは載っている。ホオジロザメだが図鑑によって〔ホホジロザメ〕になったり表記揺れがある。広辞苑ではホオジロ


50語くらい引いてみたのだが、きりがないので今回はここまで。
2022.02.26
2022.02.27(加筆)

〔地名の話〕

昨日は2022年02月22日。
〔2〕という数字が6つも含まれ、更に元々が語呂合わせで「猫の日」(にゃんにゃんにゃん)に指定されている02月22日である。

☆以下、同日の『Yahoo!ニュース』記事を要約して引用

住宅地図で知られる株式会社ゼンリンが公式ツイッターを1日限定で「ニャンリン公式ツイッター」に変更、『全国「猫地名」マップ』を公表した。
記事によると、北は青森県から南は宮崎まで
全134ヵ所の「猫」を含む地名があるのだとか。
「猫沢」17件
「猫塚」10件
「猫山」7件
などの順に多いそうだ。
面白いのは「猫三昧」という地名。猫好きならずとも思わず「ねこざんまい」と読みたくなるが読み方の正解は「ねこさみ」。記事では兵庫県明石市大久保町松陰の字名となっていた。

さすが、住宅地図の会社である。膨大な地名のデータベースが充実しているからこその「猫の日」ツイートだ。


私個人の話。
かつての趣味である林道巡りと滝の写真撮影の際に、地名を記憶・記録して帰宅後に地図で場所の確認作業をしていて感じた事。
細かい地名が多すぎる!
図書館で
『河川大事典』
日外アソシエーツ編/1991
から川の名前を拾い上げて地図で位置関係を特定、コピーした通常の地図に落とし込んで仲間内で使える地図に変換していた。

あの頃、ゼンリンさんのデータベースが使えていればもっと楽だっただろうに……。まあ、会社と無関係の個人に大事なデータを使わせてくれるはずもないが(笑)

平成の大合併で市町村の名称も変わり、町名・村名など地名が消滅した地域もある。私がかつて日外アソシエーツの『河川大事典』から書き写した水源地やその周辺の地名も今ではどう変わっているのだろうか?

2022.02.23

〔生物の方言名〕

私は生物の方言名を調べる趣味がある。ここでわざわざ“趣味”と書いたのは“お遊びレベル”だからである。

会話の中でふと耳にした不思議な言葉や表現をよくメモに残す。会話の相手は父母(故人)や親戚であったり、友人であったり、たまたま出会った漁師さんであったり、場面は様々。

あくまでも“お遊び”であるから、(今風に表現すると)“ガチな”研究ではない事をまず最初にお断りしておく。では私個人が思う“ガチ”とはどんなものを言うのか?

セミの自然誌』
中尾舜一著/中公新書/1990
によれば、かつて『昆虫界』という機関誌があり、これに『蟬の種別的方言集』(高島春雄/1937)としてまとめられたものがあるそうだ。
アブラゼミの方言名 157語
ハルゼミの方言名 31語
ニイニイゼミの方言名 108語
クマゼミの方言名 110語
ヒグラシの方言名 52語
エゾゼミの方言名 17語
ツクツクボウシの方言名 115語
という呆れるほど多くの方言名が収録されているのだという。このような研究であれば“ガチ”と呼んで差し支えないだろう。

『さかな異名抄』
内田恵太郎著/朝日文庫/1987
に収録されているのは、102科329種の魚類。
和名、異名、外国名3,367語。
文献からの引用に加えて筆者独自のデータ、巻末に索引も完備。小冊子であるという制約で割愛したものが多いとまえがきで述べているが、割愛してこの数は正に“ガチ”である。

方言名が多い事で知られるヒガンバナの日本各地での方言名を1,000以上集めた、熊本国府高等学校PC同好会による
ヒガンバナの別名』
http://www.kumamotokokufuh.ed.jp/kumamoto/sizen/hign_namek.html
なども“ガチ”だ。植物たった一種に1,000以上の異名・方言名があるという事実に驚愕。

前回の投稿(2022.02.17.)の中で取り上げた
『きのこの語源・方言事典』
奥沢康正 奥沢正紀著/平凡社/1998
も“ガチ”なピンポイント事典。
参考文献リストに『倭名類聚抄』『日萄辞書』『和漢三才図會』等々がズラリ!日本史や古典の勉強をやり直ししなければならない程に方言の奥深さを感じる次第。

少しだけ“ガチな研究”の例を挙げてみたが、私個人がやっているような“お遊び”であっても先駆者たちの事典・辞典類に採録されていない語彙がまだまだ現れるという方言収集の奥深さと困難さを実感している。
標準語という得体の知れない言葉に置き換えられて、近い将来いずれ廃れて消えていく方言の数々は何らかの形で残しておくべきではないだろうか。

2022.02.18
2022.02.23(一部加筆)

〔植物の資料に埋もれた日〕

私が植物の名前や基礎知識を調べる際に使用する図鑑や事典を紹介する。WEB上の事典や図鑑ではなく、“紙の本”に限定してある。

『植物の世界』(週間朝日百科)
朝日新聞社/1994~1997
これは知識収集の定番にしている。日本産だけに限らず世界各地の植物が収録されているからである。

『植物の名前小事典』
清水清著/誠文堂新光社/1978
『花と緑の事典』
六曜社/1996
『きのこの語源・方言事典』
奥沢康正 奥沢正紀著/山と渓谷社/1998
『語源辞典 植物編』
吉田金彦編著/東京堂出版/2001
『花と樹の事典』
柏書房/2005
『ハーブ学名語源事典』
大槻真一郎 尾崎由紀子著/東京堂出版/2009
事典・辞典ではこの6冊。それぞれ特徴のある事典だが『植物の名前小事典』は異名・方言名が豊富に収録されている。キノコ類を植物に含めるのはどうかと思うが、『きのこの語源・方言事典』は力作でキノコ以外の方言全般を調べる上でも有効。『ハーブ学名語源事典』はその分野に特化した珍しい事典でラテン語に詳しい。
『花の名前』(522種)
『木の名前』(445種)
婦人生活社/2001
の2冊は収録種数もそこそこ多く、学名(ラテン語ギリシャ語)の由来が簡潔に述べられており名前の意味を調べるには最適。図鑑としてより私個人はそういう使い方をしている(失礼)。

フィールド図鑑シリーズ
『人里の植物』
『草原の植物』
『低地の森林植物』
『山地の森林植物』
東海大学出版会/1985
の4冊は、和名(標準和名)と学名、そして和名の由来が簡潔に記載されていて簡単な調べものに使うには便利である。

初級~中級向けのFIELD GUIDEシリーズの図鑑である
『日本の野草〔春〕』(281種)
『日本の野草〔夏〕』(264種)
『日本の野草〔秋〕』(272種)
小学館/1990
の3冊セットは草本植物を大まかに把握するのに便利である。和名(標準和名)、漢字表記の他にも索引部分に学名が載っているし、全てではないにしろある程度の種に英名も付記されているので、英和辞典との連携が期待出来る。

同じFIELD GUIDEシリーズの
『日本の樹木・上』(261種)
『日本の樹木・下』(301種)
小学館/1991
『園芸植物 庭の花・花屋さんの花』(900種余り)
小学館/1995
『園芸植物 鉢花と観葉植物』(約760種)
小学館/1997
の4冊を前述の3冊に加えれば初級~中級であればかなりの部分をカバーできると考える。

エッセイ・博物誌の分野では、
『草木スケッチ帳』(1998)
『草木スケッチ帳 Ⅱ』(2002)
『草木スケッチ帳 Ⅲ』(2002)
『草木スケッチ帳 Ⅳ』(2003)
柿原申人 文・絵/東方出版
は扱う植物の種類も多く参考になる。
『毒草を食べてみた』
植松黎著/文春新書/2000
花の日本語』
山下景子著/幻冬舎文庫/2013
の2冊は私個人は“雑学知識の宝庫”として読んだ記憶がある。
『日本の樹木』(106種)
辻井達一著/長谷川哲雄 絵/中公新書/1995
『続・日本の樹木』(130種)
辻井達一著/長谷川哲雄 絵/中公新書/2006
の2冊は、著者曰く“図鑑ではなく生態誌を目指した”とのこと。必読だ。
『身近な雑草の不思議』
森昭彦著/サイエンス・アイ新書/2009
『身近な野の花の不思議』
森昭彦著/サイエンス・アイ新書/2010
の2冊は近年の生態系の撹乱(外来種など)を指摘するなど読み物として面白い。

中級~上級者向けの図鑑としては写真の美しさと解説の詳しさの点から山渓ハンディ図鑑のシリーズがお薦めだ。
『野に咲く花』(1000種)
山と渓谷社/1989
『山に咲く花』(1169種)
山と渓谷社/1996
の2冊で草本植物の多くをカバーし、
『樹に咲く花 離弁花①』(約385種)
『樹に咲く花 離弁花②』(約450種)
山と渓谷社/2000
『樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』(約460種)
山と渓谷社/2001
の木本植物3冊を加えれば、海草・海藻を除く日本産植物のかなりの部分をカバーできる。

海草・海藻類に関しては、
『海辺の生きもの』山渓Field Books
サンゴ礁の生きもの』山渓Field Books
山と渓谷社/1994
『日本の海藻』フィールドベスト図鑑(400種)
Gakken/2002
の3冊を基本情報にしている。

この他、
『日本のスミレ』山渓ハンディ図鑑
山と渓谷社/1996
は品種・自然交配種・外来種を合わせ約150種が収録されている。また、
『高山に咲く花』山渓ハンディ図鑑
山と渓谷社/2002
は約700種を収録。
『図解 猛毒植物マニュアル』
和田宏著/同文書院/1998
『薬草毒草300+20』
朝日文庫/2000
『ベリーハンドブック』(約48種)
文一総合出版/2006
『世界のハーブ手帳 改訂版』(71種)
日販アイ・ピー・エス/2017
はピンポイントの分野を攻めている。“毒草”に関しては前述の『毒草を食べてみた』と併読するのがよろしいのではないか。“ハーブ”に関しても前述の『ハーブ学名語源事典』との併読をお薦めする。一冊で完結するのではなく複数の資料に当たってみるのは、個人的な偏向した考察(すなわち“思い込み”)を排するための独学の鉄則だと私自身は考える。

他にも野菜や果物など農業に密接に関連する情報を収録した図鑑や参考書、生態学・環境科学に関する事典なども手元にあるが、今回は一旦ここまでで列挙はやめておこう。
2022.02.16
2022.02.17(一部加筆)

〔トンボ/難読漢字〕

トンボ。
昆虫の名前である。

漢字では【蜻蛉】。英語では〔dragonfly〕。
雑学以前の常識問題だ。漢字が苦手な人にとっては【蜻蛉】という漢字はそれなりに難読漢字かもしれないが(笑)。

日本語にはヤンマ【蜻蜓】という別の言葉もある。オニヤンマ、ギンヤンマなどお馴染みの昆虫が脳裏に浮かぶ人も多いのではないだろうか。トンボ類の中でも大型の種を指す。前後の脈絡無しで【蜻蜓】が出てきたら果たして読めるだろうか。
日本最大のトンボとして知られるオニヤンマには普通は【鬼蜻蜓】という漢字を当てるが、手持ちの図鑑で偶然【馬大頭】という表記を見つけた。
【馬大頭】おにやんま
漢字マニア以外、まず読めない。そもそもこの表記の由来も国語辞典・漢和辞典の類で見た事がないので今一つ判らない。

日本語ではトンボ全般は「あきつ」【秋津】と称するのは『古事記』の時代から。一部地域には方言として生き残っているかもしれないが現代ではあまり使用される機会のない言葉だ。日本の古名である「あきつしま」には
秋津島秋津洲/蜻蛉洲】
などの漢字が当てられる。
【蜻蛉洲】を「あきつしま」とはなかなか読めないと思うが。難読である。
*元々は「あきづしま」と濁る。

英語ではトンボを意味する言葉は前述の〔dragonfly〕の他に〔damselfly〕という言葉もある。〔damsel〕とは【乙女/少女】の意味。

フランス語で【お嬢様】を意味するマドモアゼル〔mademoiselle〕の〔ma〕は英語の〔my〕に相当し、〔demoiselle〕が英語の〔damsel〕に相当する語である。

さて、この〔damselfly〕だがトンボの種類で言うとイトトンボ類を指している。水辺にいる細い小さなトンボだ。
そして、日本語にもイトトンボ類を指す別の語が存在する。とうすみとんぼ【灯心蜻蛉/燈心蜻蛉】である。「とうすみとんぼ」「とうしみとんぼ」「とうしんとんぼ」「とうせみとんぼ」など言葉としての“揺らぎ”がある。【灯心/燈心】は行灯(あんどん)の芯を意味しており、イトトンボの身体の細さを表現した命名である。
【灯心蜻蛉/燈心蜻蛉】とうすみとんぼ
【行灯】あんどん
難読漢字のオンパレードだ。ついでの難読、
【豆娘】
これもイトトンボである。手持ちの昆虫図鑑に漢字名として載っているのを確認済みだが、これは中国語の〔トウニャン〕で、ネット上の難読漢字を扱うクイズで一度見た経験がある。こんな漢字、昆虫マニアや漢字マニアだってなかなか読めないと思うのだが(笑)。

前述の〔damselfly〕は広義ではイトトンボよりも大型のカワトンボ類をも含む場合がある。黒い翅が印象的なハグロトンボもその一種である。見た目が印象的であるため俗称も多い。
【鉄漿蜻蛉】おはぐろとんぼ
【鉄漿付け蜻蛉】かねつけとんぼ
これらもかなりの難読漢字であろう。【御歯黒】なら読めても【鉄漿】は読めないというパターンが多いのではなかろうか。「おはぐろ」と読ませてみたり「かね」と読ませてみたり、無理矢理漢字を当てている印象もある。

冒頭の【蜻蛉】も「かげろう」と読ませる場合もあり、現代でいうトンボとカゲロウ(昆虫学では全くの別グループ)との混同もある。『万葉集』の時代の「かぎろひ」、平安時代以降の「かげろふ」は気象の【陽炎】を意味する言葉として誕生したものだが、昆虫学では【蜉蝣】という漢字をカゲロウに当てる。
【蜻蛉】とんぼ/かげろう
【陽炎】かげろう
【蜉蝣】かげろう

言葉の混乱と揺らぎ。そして中国語からの転用に和語を当てた結果生まれる難読漢字。更に日本国内で創られた国字。
日本語とは難しい言語だ。
2022.02.16.

〔セ・リーグ/パ・リーグ〕

5,6年前の話。長らく本棚に眠ったままでいた辞典を引っ張り出してみた。

『日本語になった外国語辞典 第2版』
集英社/1988(初版は1983年)
約41,500語を収録

要するにカタカナ語辞典である。この手の辞典類は家に沢山ある。

★文献リスト
『外国からきた新語辞典 第3版』
集英社/1974(初版は1965)
『常用 現代用語新辞典』
梧桐書院/1977
『国際化新時代の外来語・略語辞典』
集英社イミダス特別付録/1988
『現代外来語辞典 特装版』
三省堂/1993
『現代新語情報辞典 改訂新版』
Gakken/1994(初版は1992)

など。上記の辞典は全部がカタカナ語辞典なのではなく、カタカナ語を含めた新語・現代語の辞典である。2022年現在でどこまで「現代語」に対応出来ているかはさておき、発行された時点ではそれなりに最新情報に基づいて編集されているはずである。

話を戻そう。
最初に挙げた集英社の外来語辞典で〔セ・リーグパ・リーグ〕を引いてみた。
セ・リーグ〕〔パ・リーグ〕という略形では載っておらず、〔セントラル リーグ〕〔パシフィック リーグ〕で載っていた。

【セントラル リーグ】〔Cental league〕
日本のプロ野球リーグの1つ。正式名称はセントラル野球連盟。1950年(昭25)に結成。現在、巨人・阪神・中日・大洋・広島・ヤクルトの6球団が所属する。

なに?大洋……?

【パシフィック リーグ】〔pacific league〕
日本のプロ野球リーグの1つ。正式名称はパシフィック野球連盟。1949年(昭24)に結成。現在、南海・ロッテ・阪急・西武・日本ハム近鉄の6球団が所属する。

ええっ?南海?阪急?近鉄

いやぁ、1988年当時は所属チーム名はこうだったのだろう。球団名が変更になった(球団経営者が替わった)のが西暦何年だったのかは私個人は正確には把握出来ていないので迂闊な発言は控えよう。

ちなみに、文献リストに挙げた辞典の中では最も古い『外国からきた新語辞典 第3版』(集英社)では〔セントラル リーグ〕の所属球団は同じだったが〔パシフィック リーグ〕の所属球団には〔日本ハム〕の代わりに〔東映〕、〔西武〕の代わりに〔西鉄〕が載っている。

ひょっとしたら、集英社の辞典編纂部門はプロ野球好きなのだろうか?(笑)

情報自体は古いが日本のプロ野球の歴史を感じる。時間が止まっているかのような、古い“紙の辞典”の楽しみ方であろう。
言葉や技術の変遷が著しいコンピュータ・IT関連の辞典などは古い辞典はもはや「古文書」を読んでいるような気分になるかもしれない。家の本棚に何冊かは所持しているので楽しんでみるのも一興か。
2022.02.14

〔humuhumunukunukuapuaa〕

かなり以前だが、『新英和大辞典 第5版』(研究社/1980)で不思議な長い単語を見つけた。
humuhumunukunukuapuaa
これである。

紙の辞典ならではの偶然の寄り道。会話のネタとして早速メモしたのだった。

ハワイ語であるようだ。
魚の名前で、ハワイ産のモンガラカワハギ類を指している。同辞典によると特にムラサメモンガラという種をこう呼ぶらしい。

ハワイ語の魚の名前で有名なのはやはり何と言ってもシイラ(現地では高級魚)を意味する
mahi-mahi(マヒマヒ)
であろう。これを前述の英和辞典で引いてみたがこちらは載っていない。
挨拶のaloha(アロハ)は……さすがにこれは載っている。食べ物のlocomoco(ロコモコ)は……載っていない。不思議な辞典だ。

本題に戻ろう。
Wikipedia』ではカタカナ読みとして〔フムフムヌクヌクアプアア〕が載っている。ただし、魚名はタスキモンガラという別種の解説文の中に出てくる。どういう事かというと、
・タスキモンガラ
Rhinecanthus rectangulus
・ムラサメモンガラ
Rhinecanthus aculeatus
どちらも同じムラサメモンガラ属で近縁種であるため、ハワイではどちらも〔フムフムヌクヌクアプアア〕と呼ばれているらしい。

どれくらい近縁の種かというと、『つり情報』(月2回発行)という雑誌記事で、タスキモンガラとムラサメモンガラの中間型(自然交配か?)が写真付きで紹介されていた(2015年08月15日号)。体表の柄(模様)が正に両種の中間!日本国内で採捕(釣り)された個体である。
ハワイ語で解説すれば、
humuhumunukunukuapuaaと
humuhumunukunukuapuaaとの間に生まれた
humuhumunukunukuapuaa
という“寿限無”のような文章が……(笑)

『魚の名前』(中村庸夫著/東京書籍/2006)では、〔タスキモンガラ〕の項目の中で、“1984年に5年間の期間限定で「ハワイ州の州魚」とされたがその後投票がされていない事から非公認である”という旨を載せているが、『Wikipedia』によると2006年に再投票されて公認である旨が紹介されている。なんと、本が発行されたその年に再投票され再び公認になったのだ。なんというタイミングの悪さ!

念のため何冊かの手持ちの図鑑で確認してみたところ、ハワイの州魚であるからといって日本では珍しいのかというとそうではない。
『原色日本海水魚類図鑑(Ⅰ,Ⅱ)』(保育社/1985)
『世界の海水魚』(山と渓谷社/1987)
『日本の海水魚』(山と渓谷社/1997)
日本では本州中部以南の暖海から熱帯域、世界では西太平洋~インド洋の主にサンゴ礁域に分布しているらしい。釣り関係の雑誌やダイビング関係の本に掲載されているくらいだから特に希少な種でもないと推察される。

ところで、ハワイの漁師さん達がこれらのモンガラカワハギ類を普段こんな長い〔フムフムヌクヌクアプアア〕などという名前で呼んでいるのかなぁ……?日本語に訳すと“豚のように鳴く角張った魚”という意味らしいのだが、普段呼ぶにはちょっと長過ぎる……

どなたか御存知ありませんか?
2022.02.13