辞典で暇つぶし

辞典と図鑑が大好きです。

〔動物・植物の難読漢字〕vol.03

難読漢字の3回目。

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【木五倍子/木付子/通条花】
読み方は〔キブシ〕。
キブシ科の落葉樹。
ふし【付子/附子/五倍子】とはヌルデに生じる虫癭(ちゅうえい)で黒色染料としてのインクやお歯黒用染料の原料となる。虫癭とは虫瘤(むしこぶ)のことで、昆虫が寄生することにより植物体が異常発育をした部分をいう。
そのヌルデのふしの代用とされたのがキブシの実。通条花はキブシの漢名。
*植物にある程度詳しい人以外は漢字を読む事はおろか、解説自体が何が書かれているのか理解するのに時間がかかる(笑)し、難読漢字のオンパレードである。
ちなみに、解説文に出て来るヌルデ(ウルシ科)は漢字では【白膠木】と書く。ヌルデに出来る虫癭はヌルデノミミフシと呼ばれ、漢字表記では【白膠木耳五倍子】となる。こりゃ普通の人には読めないわ。

【春告魚】
読み方は……文脈によって変化する。
〔ニシン〕〔メバル〕〔イカナゴ〕〔サワラ〕など、地域によって指している魚種が変わる。こうなるともはや〔はるつげうお〕と読むしかない状況である。
こんな酷い難読漢字も珍しい(笑)。ある意味、最高難度と言える。

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2022.04.01
2022.04.26(加筆)

〔広辞苑で遊ぶ〕vol.05

おとぎ話(童話/童謡/伝説)である『浦島太郎』に関する生物名を『広辞苑 第四版』で検索してみたところ、下記のような結果だった。

〔竜宮/竜宮城〕
リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ
*アマモの項目にこの別名が出て来ないという事実誤認を不用意にUPしてしまったが、再度引き直したところ、きっちり記載がある事が判明。大変失礼致しました。猛省。

〔乙姫〕
リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ
オトヒメエビ
オトヒメノハナガサ

〔浦島〕
ウラシマソウ
ウラシマツツジ

〔玉手箱〕
*生物名なし

〔カメ〕
〔ウミガメ〕
*浦島太郎と関連のある項目なし
*カメの項目の解説文中に「―の甲(せ)に乗りて」の記述あり

〔タイ〕
〔ヒラメ〕
*浦島太郎と関連のある項目なし
*これら項目に浦島太郎伝説の記述を求めるのは流石に難癖であろう。

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色々なおとぎ話・昔話・伝説に登場する人物名(キャラクター名)などを広辞苑の中から検索してみるのも遊び方の一つ。

『金太郎』の〔きんとき〕など、生物名の中にいかにもありそう。私の既に頭の中では魚類の名前が浮かんでいるが、どうでしょう?

『桃太郎』のイヌ・サル・キジだったら更に多くの生物名が…………

2022.03.23
2022.04.04(加筆)

〔動物・植物の難読漢字〕vol.02

前回は植物の難読漢字をいくつか紹介したが今回は動物の難読漢字を紹介しよう。

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【大蛇】
読み方は〔おろち〕。
〔だいじゃ〕〔おおへび〕と読んでも間違いではない。難読漢字の中では序の口。
一般的には【八俣の大蛇】で知られた語であるが、【虵】【虵蛇】で〔おろち〕(歴史的仮名遣いでは〔をろち〕)と読ませる方がより一層難読漢字っぽいであろう(笑)。

【赤楝蛇/山楝蛇】
読み方は〔やまかがし〕。
蛇の一種。ナミヘビ科ヤマカガシ属。
古くは無毒とされていたが研究が進んだ現代ではれっきとした毒蛇とされている。読み難い上に、まずヤマカガシという蛇を知っているかどうかを問われる。

紙魚
読み方は〔しみ〕。昆虫の名称である。
昆虫綱総尾目(シミ目)。
昆虫は過変態(亜成虫の時期を有する)、完全変態(蛹の時期を有する)、不完全変態(蛹の時期を経ない)などの分類が為されるが、シミ類は無変態(成虫と幼虫が大きさが違うだけで同じ形態)という原始的な昆虫である。
【衣魚】【銀魚】など辞典類によく登場する漢字表記の他、【蟫魚①】【蠹魚②】などの表記も昆虫のシミを意味している。林修先生に勝つ(笑)ためには①②などをお薦めする。

【朱鷺】
読み方は〔とき〕。
言わずと知れた鳥の名称である。分類的にはペリカン目トキ科トキ属。
これは難読という程ではない、と断言できる方向けには【桃花鳥】【鴇】【紅鶴】【鵇】【鴾】【鳭】【䴈】【?】(←表示不可;月に鳥)なども〔つき〕(古い時代のトキの意味)と読む事を覚えておくと漢字オタクとして尊敬される(かもしれない)。

【天牛】
読み方は〔かみきりむし〕。
甲虫の一群の名前である。分類的には鞘翅(甲虫)目カミキリムシ科。
髪切虫】が本来の表記だが、現代では【紙切虫】という表記も一部の辞典に採用されている。かつて昆虫学の黒澤良彦博士は【咬切虫】という表記を提唱した。

【瓢虫】
読み方は〔てんとうむし〕。
鞘翅(甲虫)目テントウムシ科。
通常は【天道虫】という表記だが、一部の図鑑では中国語の【紅娘】(ホンニャン)を採用している。
漢字【瓢】は〔ひさご〕と読み、ユウガオやヒョウタンを意味している。テントウムシという名前を“ヒサゴムシが本来の名前である”とする記述をかつて読んだ事があるが、辞典の類で採用(言及)されているのを発見出来なかった。

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今回は同じ生き物に複数の表記があるものを集めてみた。得意分野の昆虫が多いのはご愛嬌。

2022.03.19
2022.03.21(加筆)

〔beetleとwasp〕

Wikipedia』の英語版などで○○beetleと付いていれば甲虫類を指している。

海外の昆虫を調べていて、『Wikipedia』の英語版を引いて自動翻訳の日本語訳を読むと、[beetle]の部分がほぼ全て[カブトムシ]と訳されている。これは非常に気持ちが悪い。

例えば、クワガタムシは英名stag beetleだがこれを[鹿のカブトムシ]と訳されたら訳が解らない。自動翻訳だとほとんどこの調子なのだ。

ドイツ語の[Käfer]、英語の[beetle]に対する訳語としてかつては(明治期)【甲翅虫】という語が使われこれが現在の省略形【甲虫】となるのだが、意訳として【鞘翅目】が使われていた経緯があって鞘翅目と甲虫目が併記されてきた。近年、平易なカブトムシ目という語が使われるようになり(個人的には)これが原因となってワケの解らない日本語訳が出て来る事態に陥っている気がしている。
いや、もっと単純に翻訳辞書の中身が
beetle=カブトムシ
になっているだけなのかもしれないが(笑)。

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同じ事が英単語[wasp]にも言える。waspは自動翻訳だと[スズメバチ]と訳されているが、蜂の名称に広く使われるwaspスズメバチと訳すと意味が通じない場合が多々ある。

bee=ハナバチ類
honeybee=ミツバチ類
bumblebee=マルハナバチ
carpenterbee=クマバチ類
leaf-cutter bee=ハキリバチ類
sweat bee=コハナバチ類
sawfly=ハバチ類
rose sawfly=ミフシハバチ類
stem sawfor=クキバチ類
等々、ハチ類を表す英名はこの他にもまだまだある。例えば○○waspという英名だと、
spider-hunting wasp=ベッコウバチ類
mammoth wasp=ツチバチ類
digger wasp=ジガバチ類
braconid wasp=コマユバチ類
fig wasp=イチジクコバチ
gall wasp=タマバチ類
……等々。少しだけ例を挙げてみただけだが、一口に[wasp]と言っても、必ずスズメバチを意味しているわけではないのである。
要するに[social wasp]の中の一部だけがスズメバチと呼んで問題がない、という話。

yellow jacket=クロスズメバチ
hornet=モンスズメバチ
vespa=スズメバチ
Japanese giant hornet=オオスズメバチ
等々の英名であれば[スズメバチ]と訳してもほぼ問題ないと考える。

多分、翻訳辞書の中身は全く吟味せずに
waspスズメバチ
なのだろう。

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2022.03.09
2022.03.22(加筆)

〔広辞苑で遊ぶ〕vol.04

昆虫オタクである事は既にカミングアウトしてある(笑)私なので、広辞苑で遊ぶ時にも昆虫の名前を引く場合が多くなる。

以下はその時の結果。
思い付きなので並び順はランダム。
解説文の中に出てくる種名の末尾にある○印は小項目あり、×は無し。

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かみきりむし【髪切虫/天牛】
ゴマダラカミキリ
・クワカミキリ○
別項目にトラフカミキリが〔くわとらむし〕として記載されている。また、大害虫として有名なマツノマダラカミキリやキクスイカミキリ、スギカミキリも別項目がある。が、どの項目へも飛べない。

ごみむし【芥虫/歩行虫】
・ゴミムシ○
・キベリアオゴミムシ×
・ミズギワゴミムシ×
別項目としてミイデラゴミムシは記載されているがそこへは飛べない。

あざみうま【薊馬】
植物の〔あざみ〕の枝項目にアザミウマが存在する。逆に記載がある事に驚いた。

モルフォちょう【Morpho蝶】
・タイヨウモルフォ×
メネラウスモルフォ×
流石に種名単独の項目はない。

やままゆ【山繭】
ヤママユガ科は載っているが別項目として記載があるオオミズアオには飛べない。そのオオミズアオの項目の中の記述には近似種であるオナガミズアオへの言及はない。

かめむし【亀虫
解説文の中には種名はないが、図(挿し絵)に〔ぶちひげかめむし〕という名前がある。
また、〔さしがめ〕という別項目も存在するし、植物の〔くさぎ〕の枝項目にクサギカメムシも記載がある。勿論、〔かめむし〕の項目からは飛べない(笑)。

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紙媒体の『広辞苑 第四版』だからこその暇潰しである。これがCD-ROM版や電子辞書版では何も暇潰しにはならない。紙媒体の辞書の面白さは、本来の目的の語の隣近所(基本的には無関係)の語も“ついでに”見渡せる事である。

もう既にネタになりそうな語をいくつも見つけてある。覚え書きの日記のようなブログなので、老化防止のためにはこのような豆知識の集積(インプット&アウトプット)が効果的。

もう少し項目を並べる事も出来るが、とりあえず今回はここまで。

2022.03.19
2022.03.21(加筆)

〔料理名・食材名のカタカナ語〕

近年、料理名・食材名にはカタカナ語が氾濫している。フランス料理が流行ればフランス語、イタリア料理が流行ればイタリア語、韓国料理が流行れば韓国語が各々カタカナでどんどん増えていく。

試しに昨年(2021年)10~12月にTV放映されたバラエティー番組の中から、私が知らない(またはうろ覚えの)料理名・食材名をメモしてみたら軽く100語を超えていたので呆れて、それ以降メモするのをやめた。これは学者あるいは料理人の仕事である。私はどちらでもない。

念のため、メモした単語が手持ちの辞典数冊で項目として採録されているかどうかを確認してみたが、全体の3割程度しか辞典類には載っていなかった。紙媒体のカタカナ語(外来語)の辞典は常に更新し続けなければならないようだ。

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随分昔だが(1980年代?)、ズッキーニが分類的に何科の植物なのかを調べようと家にあった『世界大百科事典』(平凡社/1972)を引いてみた。

まずは普通に「す」から引いたが記載無し。しかし、これで終わると百科事典を引いた事にはならない。通常、百科事典には総索引というものが付属している。別の項目の中でズッキーニに言及している部分があるかもしれない。それを見つけるために総索引というものは存在するのだ。

結局、残念ながらこの百科事典には総索引の中からもズッキーニは検索出来なかった。これを踏まえて、百科事典を補うという役割を担うカタカナ語の辞典を買う事にした。

これが私の辞典放浪癖が強まった瞬間の話である。百科事典の補完用の辞典が増える。何となく本末転倒のようにも思える(笑)が、百科事典は古いと役に立たない場合があるというのも歴然とした事実である。

当時はコンピュータ・パソコン時代の黎明期で、インターネットで何でも調べられる環境など夢の世界であった。現代では複数の辞典を同時に文字列検索する事が可能なため、スマホ一つで情報は簡単に入手できる。その一方で一般人がUPしたネット情報も氾濫しているため、情報の学術的な信頼性も個人で判断する(しなければならない)事態に陥っている。

便利になった一方で、真贋の判断は個人持ち。これまた本末転倒に思えなくもない(笑)。

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ちなみに、紙媒体の辞典『広辞苑 第四版』(岩波書店/1991)では〔ズッキーニ〕は載っている。ズッキーニが載っているかどうか、私個人の辞典選びの一つの指標になっている(笑)。あとは〔カミキリムシ〕が単独の項目として載っているかどうか。載っていれば昆虫(→生物学)に明るい編集者(またはスタッフ)が参加している証拠。これも経験から得られた個人的な辞典選びの指標の一つである。

だから何なんだ?って聞かれても困る。個人の辞典選びの基準である。ただ、辞典好きという趣味を持つ人の中にはこれに類するような指標(買うための)を持つ人は多いのではなかろうか?という単純な指摘、それだけの事である。

ズッキーニやカミキリムシが載っていない場合には私が次に購入する辞典の優先順位リストの下位に落とされるわけだ。他にも幾つかの指標となる単語があるが、あまりにも個人的な指標であるため、リストアップしてもあまり意味が無い(汎用性が低い)ので省略する。

2022.03.16
2022.03.19(加筆)

〔動物・植物の難読漢字〕vol.01

TVのクイズ番組にありがちな動物・植物の難読漢字を紹介していく。

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茱萸
日常生活で使う漢字ではない。普通の人は(私も含め)前もって勉強していない限り読めない。
読み方は〔グミ〕。
グミ科グミ属。
近年流行りの駄菓子のグミはゴムを意味するドイツ語のgummiに由来するが、植物名のグミとは全く関係ない。

百日紅
漢字自体は簡単だが読み(意味)を知らないと全く読む事は出来ない。
読み方は〔サルスベリ〕。
ミソハギサルスベリ属。
猿も滑るくらいに幹がつるつるとの特徴から付いた名称である。そのまま〔ひゃくじつこう〕と読んでも間違いではない。

【万年青】
これまた簡単な文字で難読、事前に勉強しないと(知らないと)読めない類の植物名である。
読み方は〔オモト〕。
ユリ科オモト属。
漢字の万年青は常緑の多年草である事に由来するが和名のオモトには語源説がいくつもある。大分県の御許(おもと)山が産地であったとする説、株が大きくなる事から大本(おおもと)に由来するとする説、青本(あおもと)に由来するとする説、母人(おもひと)に由来する説など様々。

【羊蹄】
北海道南部に羊蹄山(ようていざん)という山があるため、普通に〔ようてい〕と読める人は多いであろう事は想像に難くない。
植物名としての読み方は〔ギシギシ〕。
タデ科スイバ属。
羊蹄山の別名【後方羊蹄】(しりべし)の末尾の〔し〕は〔ギシギシ〕の古名。
和名は葉っぱ同士を擦り合わせた際の音に由来するらしいが地方名(方言)が多数ある。

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漢名に日本語名を当てたいわゆる「当て字」が多いのだが、語源や由来を辞書で引いてみて、それと共に図鑑を眺めると覚え易い。

今回はここまで。

2022.03.04
2022.03.16(加筆)