辞典で暇つぶし

辞典と図鑑が大好きです。

〔humuhumunukunukuapuaa〕

かなり以前だが、『新英和大辞典 第5版』(研究社/1980)で不思議な長い単語を見つけた。
humuhumunukunukuapuaa
これである。

紙の辞典ならではの偶然の寄り道。会話のネタとして早速メモしたのだった。

ハワイ語であるようだ。
魚の名前で、ハワイ産のモンガラカワハギ類を指している。同辞典によると特にムラサメモンガラという種をこう呼ぶらしい。

ハワイ語の魚の名前で有名なのはやはり何と言ってもシイラ(現地では高級魚)を意味する
mahi-mahi(マヒマヒ)
であろう。これを前述の英和辞典で引いてみたがこちらは載っていない。
挨拶のaloha(アロハ)は……さすがにこれは載っている。食べ物のlocomoco(ロコモコ)は……載っていない。不思議な辞典だ。

本題に戻ろう。
Wikipedia』ではカタカナ読みとして〔フムフムヌクヌクアプアア〕が載っている。ただし、魚名はタスキモンガラという別種の解説文の中に出てくる。どういう事かというと、
・タスキモンガラ
Rhinecanthus rectangulus
・ムラサメモンガラ
Rhinecanthus aculeatus
どちらも同じムラサメモンガラ属で近縁種であるため、ハワイではどちらも〔フムフムヌクヌクアプアア〕と呼ばれているらしい。

どれくらい近縁の種かというと、『つり情報』(月2回発行)という雑誌記事で、タスキモンガラとムラサメモンガラの中間型(自然交配か?)が写真付きで紹介されていた(2015年08月15日号)。体表の柄(模様)が正に両種の中間!日本国内で採捕(釣り)された個体である。
ハワイ語で解説すれば、
humuhumunukunukuapuaaと
humuhumunukunukuapuaaとの間に生まれた
humuhumunukunukuapuaa
という“寿限無”のような文章が……(笑)

『魚の名前』(中村庸夫著/東京書籍/2006)では、〔タスキモンガラ〕の項目の中で、“1984年に5年間の期間限定で「ハワイ州の州魚」とされたがその後投票がされていない事から非公認である”という旨を載せているが、『Wikipedia』によると2006年に再投票されて公認である旨が紹介されている。なんと、本が発行されたその年に再投票され再び公認になったのだ。なんというタイミングの悪さ!

念のため何冊かの手持ちの図鑑で確認してみたところ、ハワイの州魚であるからといって日本では珍しいのかというとそうではない。
『原色日本海水魚類図鑑(Ⅰ,Ⅱ)』(保育社/1985)
『世界の海水魚』(山と渓谷社/1987)
『日本の海水魚』(山と渓谷社/1997)
日本では本州中部以南の暖海から熱帯域、世界では西太平洋~インド洋の主にサンゴ礁域に分布しているらしい。釣り関係の雑誌やダイビング関係の本に掲載されているくらいだから特に希少な種でもないと推察される。

ところで、ハワイの漁師さん達がこれらのモンガラカワハギ類を普段こんな長い〔フムフムヌクヌクアプアア〕などという名前で呼んでいるのかなぁ……?日本語に訳すと“豚のように鳴く角張った魚”という意味らしいのだが、普段呼ぶにはちょっと長過ぎる……

どなたか御存知ありませんか?
2022.02.13