辞典で暇つぶし

辞典と図鑑が大好きです。

〔Gの方言名〕

台所の嫌われ者、G。
ネット上では、名前を文字にするのも嫌!という人々から通称“G”と呼ばれている。
私は千葉県民だが、子供時代には両親が「へーはち」と呼んでいたのを記憶している。子供時代に見た昆虫図鑑に別名「あぶらむし【油虫】」と載っていた事も記憶にある。

10数年前、国語辞典の類(PC用のCD-ROM辞典を含む)で検索してメモしておいた名称と、かつて読んだ何冊かの本からのメモを本棚で発見したので、ネット上から拾い上げた方言名(真偽はともかく)とを合わせて集めてみた。

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ゴキブリ【蜚蠊】
〔あくたむし〕全国(古語?)
〔あぶらむし〕全国
〔あま〕和歌山県(*)
〔あまべ〕瀬戸内海地域(*)
〔あまめ〕和歌山県(*)、三重県(*)、長崎県(*)、鹿児島県(*)、宮崎県(*)
〔きがねむし〕茨城県(*)
〔くーむや〕沖縄県宮古島(*)
〔くろじょう〕鹿児島県種子島(*)
〔けにた〕千葉県夷隅地方
〔ごっかぶい〕佐賀県(*)
〔ごっかぶり〕大阪府(*)
〔せーはち〕神奈川県三浦半島(*)
〔つのむし〕全国(古語?)
〔とーびーらー〕沖縄県(*)
〔とっく〕長崎県(*)
〔びーらー〕沖縄県(*)
〔へーはち〕三重県(*)、和歌山県(*)、千葉県南部
〔へは〕三重県(*)
〔ぼっかぶり〕山梨県(*)

(*)はネット上の情報であるため再検証が必要であるが、近年急速に方言が死語として消滅しつつあるため敢えて採録した。当然現在使われていない語や単純な間違いもあるかもしれないがそれも含め“敢えて”である。
なお、煩雑さを避けるためネット上の引用元は省略させて頂いた。

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〔せーはち〕〔へーはち〕に関しては〔せいはち〕〔へいはち〕として記述されている場合が多いようだが、語源が明確ではなく発音通りに近い形で敢えて〔ー〕を使用した。三重県の〔へは〕なども同系の言葉かもしれない。
黒潮の流路に沿って紀伊半島方面から神奈川県経由で千葉県への人間の移動があったのかもしれない、などと想像した。

茨城県の〔きがねむし〕は〔黄金虫〕からの訛りなのだろうか?などと想像した。童謡「黄金虫」が甲虫のコガネムシではなく実は「G」を意味しているという雑学ネタに信憑性を与えるものであろう。

〔ごっかぶい〕〔ごっかぶり〕〔ぼっかぶり〕も同系の言葉だろう。ゴキブリという現代では正式な名称にまで昇格した(笑)言葉の語源は、本来の【五器被り】【五器囓り】を誤植(脱字)でゴキブリとしてしまった生物学用語集があって全国的な言葉となっていった経緯によるが、それより以前の形のまま地域ごとに訛っていった事が容易に想像できる。なお、【五器】(蓋付きの椀)という漢字表記ではなく【御器】としている本もあるが江戸時代の百科事典『和漢三才図会』では【五器】であるらしい。

〔あま〕〔あまめ〕〔あまべ〕は系統は同じなのだろうが語源は不明。〔くろじょう〕〔けにた〕〔とっく〕に関しては語源が想像すら出来ない。特に〔けにた〕は私が所有する本からの引用だがざっくりとした検索ではネット上にも確認出来なかった。

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『日本方言大辞典』
全3巻/小学館/1989
日本国語大辞典
全14巻/小学館/2000~2002

今後、図書館にて各々の語をこれらの“言葉の集大成”と言える辞典で確認してみたい。が、人知れず“G”の方言名を黙々と調べる人が出没する図書館は何となく不気味かも……?


いやはや、Gの世界は深い。

2022.03.02